調理で加熱する、エアコンで室温を変える、すだれで日光を遮断するなど温度調整は日常生活にあふれています。
調整すべき熱の発生源やコントロールの仕方は様々ですが、熱の伝わり方という視点で考えると3つに分類することができます。
3つの伝熱と解析とのかかわりを紹介いたします。
COLUMN
技術コラム
【構造】ひろこの部屋vol.5 熱問題で見る現実と解析の間
熱の伝わり方の分類
熱の伝わり方は以下の3つに分類することができます。
● 熱伝導: 物体の内部を熱が伝わる
● 対流: 流体が移動することで熱が伝わる
● ふく射: 電磁波により熱が伝わる。
例えば、フライパンの底面を熱し全体が温まるのは熱伝導、エアコンで室温が均一になるのは対流の影響が強く、太陽光による伝熱はふく射の代表的な例です。
温度を均一にするにも熱を逃がすにもこの3つ方法で熱をコントロールする必要があります。
3つの伝熱と解析の位置づけ
● 熱伝導
物体の内部を高温側から低温側へ熱が伝わっていきます。
熱の伝わりやすさは媒体となる物質固有の熱伝導率により決まります。
熱の扱える解析、構造解析の熱伝導解析、熱流体解析、電磁界の熱オプションなど多くの解析種別で考慮ができる伝熱方法です。
~熱伝導率の算出と単位~
熱伝導率 × 温度勾配 = 単位面積・単位時間あたりの熱の流れより
[熱伝導率]×[K/m] = [W/m^2]
[熱伝導率]=[W/(m^2・K/m)] = [W/mK]
● 熱伝達
流体が移動することに伴い発生する熱の移動です。
媒体となる流体の種類の他、流体の移動速度や流れの乱れにより熱の伝わりやすさである熱伝達率が決まります。
熱伝達係数を得るには実験などで計測する、または、熱流体解析で解析を行う必要があります。
得られた熱伝達係数を構造解析の境界条件として適用することで、対流の影響を想定した熱計算を構造解析でも扱うことが可能です。
~熱伝達率の算出と単位~
熱伝達係数=熱流束/(物体表面の温度―流体の温度)より
[熱伝達係数]=[W/m^2]/K=[W/m^2 K]
● ふく射
熱を持った物質から電磁波として熱が放射される現象で、媒体を必要としない伝熱です。
熱の放射量は絶対温度の4乗に比例し高温になるほど影響が顕著になります。
熱の放射量は物質、表面加工、光の波長により異なり、放射率により定義します。
放射率とは光を完全に吸収する黒体のエネルギー量を1とした時の比率で 0<放射率(ε)<1 で表します。
ふく射によるエネルギーはある面に達した時に、反射・透過・吸収します。
構造解析の熱伝導解析、熱流体解析などでふく射の考慮が可能ですが、透過の考慮、放射の反射回数制限にソフトウェアごとの違いがあります。
特に照明器具のように発熱体がガラスなど光を通す部材で覆われた製品を検証する際は、透過を考慮できるソフトウェアの利用をお勧めいたします。
~ふく射に関する計算式~
ふく射エネルギー=放射率×ステファンボルツマン係数×(絶対温度)^4
ここで、放射率=吸収率、反射率+透過率+吸収率=1が成り立つ。
透過率=0の場合 反射率+吸収率=1 → 反射率=1-吸収率=1-放射率 となる。
※放射率はふく射率と表現されることもあります。
構造解析で考える熱伝導解析
最後に構造解析ソフトウェアで熱伝導解析を扱う場合の3つの伝熱に対する対応をまとめます。
● 熱伝導: 考慮される。
● 熱伝達: ソフトウェア内では計算されない。測定値あるいは仮定した値を境界条件として入力する。
● ふく射: 考慮される。ただし透過や波長依存の考慮や、放射回数はソフトウェアにより制限あり。
このように、構造解析ソフトウェアの熱伝導解析では熱伝達とふく射計算に制約があります。
解析対象モデルが流体の影響を大きく受ける場合やふく射を含む精密な計算を行いたい場合は熱流体解析など別のツールを検討する必要があるかもしれません。
一方、構造解析ソフトウェアの熱伝導解析は現象を制限することで設定工数や計算時間を短縮することができます。
つまり同じ作業時間でも多くのケースを比較することができるのです。
さらに、熱により生じる熱応力や熱変形の問題を同じ環境、同じメッシュで検証することが可能です。
制限を理解した上で、熱問題の検証に役立ててください。
次回は熱応力について解説したいと思います。
[From H. Horiuchi]
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