空き缶の上から力を掛けると円筒面に凹凸ができます。これは代表的な座屈現象です。この様に、細長い形状や薄板形状の物に対して圧縮の力が掛かる事例では、材料の降伏強度の他に、座屈の発生を考慮する必要があります。
COLUMN
技術コラム
【構造】ひろこの部屋vol.4 薄板の圧縮は要注意 座屈解析
座屈とは
空き缶の上から力を掛けると円筒面に凹凸ができます。空き缶のような薄板や細長い形状の物に対して圧縮の力が掛かり、荷重方向とは異なる方向へ物が変形する状態、これは代表的な座屈現象です。
その他、小さなコイルばねの両端を押して横に飛んでいくのも、出しすぎたシャープペンシルの芯をシャープペンシルに戻そうとして芯が折れてしまうのも、座屈現象です。
日常でも頻繁に遭遇する座屈現象は、臨界点を超えると突然変形して壊れるという性質があります。そのため、薄板や細長い部材に圧縮力が働く場合は、座屈の考慮を行うことが重要となります。
静解析と座屈解析
力を掛けた時の力のつり合い状態を見るには線形静解析を使用します。しかし、線形静解析では上述のような座屈現象の危険度を測ることができません。
線形静解析では入力した力に対して内部的な釣り合いを計算します。つまり力は入力方向に伝わっていくことが前提となっています。
それに対して、座屈は不釣り合い力により発生する現象のため、線形静解析では想定の範囲外となります。
右の図は丸棒の下方を拘束、上方に力を掛けた場合の線形静解析と座屈解析の変形結果です。線形静解析では力の方向に縮む結果になるのに対し、座屈解析では横に逃げる結果が得られます。
なお、線形静解析では安全率として材料の余力を確認します。座屈解析では座屈荷重係数という指標がこの安全率にあたります。座屈が発生する値(座屈荷重)は下記の計算で簡単に求めることができます。
座屈荷重 = 入力した値 × 座屈荷重係数
右の図(炭素鋼を想定)の場合、線形静解析の安全率7.6に対して座屈荷重係数は0.805という結果になりました。線形静解析では十分余力がありますが、座屈解析の結果では入力した荷重より前の段階で座屈が発生するということが分かります。
オイラーの座屈荷重
座屈解析の対策を考える場合、座屈荷重の計算式であるオイラーの式を元に考えることができます。
上式のnは固定方法により決まる定数です。
●両端回転自由:1
●両端固定:4
●固定端+自由端:0.25
上式より材料長さ(l)を短くする、縦弾性係数(E)を大きくする、断面2次モーメント(I)を大きくすることで荷重係数(P)を上げられることが分かります。
では、断面2次モーメントを変更した例として長さ1mの丸棒と角棒に対する解析結果を比較してみましょう。安全率、座屈荷重の値は炭素鋼を想定しています。
面積は丸棒の方が若干大きく平均応力[荷重/断面積]は丸棒の方が低く、安全率が高い結果となります。一方、断面2次モーメントでは角棒の方が大きく座屈荷重係数は角棒の方が高い結果となります。
この様に、断面形状を変えることで座屈強度を上げることができます。
角棒は丸棒に比べて面積が小さいので単純押し出し梁の重量は軽くなります。
軽くて強度アップとは、一石二鳥ですね。
<補足>
代表的な形状の断面2次モーメント算出式は機械便覧で参照することが可能です。また、CADツールでも面特性として断面2次モーメントを確認できます。
[From H. Horiuchi]
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