今回の流体コラムでは、熱流体解析ソフトSimcenter FLOEFDを使用し、密閉筐体の材料を変更した際の発熱部品の温度変化を検証します。
COLUMN
技術コラム
【流体】熱と流れの不思議vol.8 密閉筐体の材料変更による発熱部品への影響
解析概要
今回の解析では、密閉筐体内(250㎜×150㎜×60㎜、厚み3㎜)に発熱体のチップ(50㎜×50㎜×6㎜)とチップを支持する台座を配置した簡易形状を使用し、チップの固体温度を評価します。自然対流を考慮して解析を実施します。
▲図表1 解析条件
▲図表2 解析モデル
〇解析ケース
筐体材料を以下の2種類で変更し、結果の比較を行います。
どちらの解析ケースでチップの温度が高くなりそうでしょうか?
材料 | 熱伝導率 | 放射率 |
---|---|---|
アルミニウム筐体 | 240 W/(m・K) | 0.2 |
樹脂筐体 | 0.25 W/(m・K) | 0.8 |
▲図表3 解析モデル
▲図表4 ケース別解析モデル
解析結果
〇チップ固体温度・温度上昇 結果
固体温度(チップ) | 温度上昇(環境温度:20℃) | |
アルミ筐体 | 71.0 ℃ | 51.0 ℃ |
樹脂筐体 | 64.0 ℃ | 44.0 ℃ |
▲図表5 解析結果(固体温度・温度上昇)
結果として発熱体の温度上昇は樹脂筐体の方が14%低い結果となりました。
まとめ
今回の流体コラムでは密閉筐体の材料を変更した際の発熱部品の温度変化を検証しました。解析結果から、密閉筐体の材料をアルミから樹脂に変更することで温度上昇が14%低減することが分かりました。金属表面は格子振動が少ないため、電磁波による熱エネルギーの放出が少なく、放射率・吸収率が低くなります。表面を塗装したり(放射率は同じ材料でも表面の性状によって数値が異なります) 、樹脂材料に変更することで格子振動が活発になり、放射率・吸収率が上昇することで発熱体の温度が下がりました。
上記の通り、密閉筐体の場合、放射率の値には特に注意が必要です。(強制対流でチップの放熱を行う場合は効果が薄いです)
[From K.Okano]
〇解析条件 | |
---|---|
発熱源 | 5 W |
物理特性 | 重力・ふく射 |
デフォルトの放射率 | 0.8 |
デフォルトの熱伝導率 | 20 W/(m・K) |
環境温度 | 20 ℃ |
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