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技術コラム

【流体】熱と流れの不思議vol.10 PUSH型ファン・PULL型ファンの比較検討

2022年04月07日

今回の流体コラムでは、熱流体解析ソフトSimcenter FLOEFDを使用し、PUSH型ファン(機器に外気を押し込む)・PULL型ファン(機器の内部空気を排出する)の流れの比較と、発熱体の温度変化を検証し、仮想の電子筐体に適したファンの選択を行います。

PUSH型・PULL型のメリットとデメリット

下記のメリット/デメリットを踏まえて検証を行い、2つのファンの比較検討を行います。

PUSH型 PULL型
メリット ・ファンを通過する流体温度が低くなる
・筐体内で攪拌効果が得られる
・均一な流れを生じるため、ホットスポットができにくい
デメリット ・流速にむらが出るため、ホットスポットができやすい ・ファンを通過する流体温度が高くなる
・ショートカットが発生する場合がある

▲図表1 PUSH型・PULL型のメリットとデメリット

解析概要

今回の解析では、2か所の通風孔(φ32)とファンを設けた筐体(160㎜×160㎜×120㎜)、
及び発熱体のチップ(21㎜×7㎜×3㎜)×8とチップを支持する基板(130㎜×100㎜×1㎜)を配置した簡易形状を使用し、各チップの固体温度と空気の流れを評価します。



 
▲図表2 解析モデル


▲図表3 解析条件

〇解析ケース
ファンをPUSH型にした場合とPULL型にした場合で、発熱体の温度上昇、及び空気の流れを比較します。

▲図表4 部品名と発熱量


解析結果

〇各チップ温度上昇 結果(環境温度:20℃)


 
▲図表5 チップ温度上昇 結果(環境温度:20℃)


すべてのチップでPUSH型の方が温度上昇は小さくなることが確認できました。
温度上昇を確認するとチップAで温度上昇差が最も大きく(5.1℃・12%)、チップGで差が最小(1.7℃・4%)となりました。PUSH型で目立ったホットスポットが発生していないことも確認ができました。


 
▲図表6 断面プロット(温度) 結果



 
▲図表7 流跡線(流速) 結果


PUSH型では勢いよく吐き出された空気が対向面まで進み、機器内部の空気を攪拌した後に通風孔から出ていきます。一方、PULL型は通風孔からファンへのショートカットが発生し、基板周辺の流れが比較的少ないことが分かります。

まとめ

今回の流体コラムではPUSH型ファン・PULL型ファンの流れの比較と、発熱体の温度変化の検証を実施しました。解析結果から、すべてのチップにおいてPUSH型の方が温度上昇は小さくなることが確認できました。流れ場の結果から、PUSH型のファンを使用するとPULL型よりも機器内部の流体を攪拌する効果が生まれ、チップの放熱効果を高めることが分かりました。PULL型のファンを使用する場合、今回の通風孔の位置は適切でないことが分かります。制約により通風孔の位置を適切に設計できない場合、PUSH型ファンの特徴を利用することで温度の低減を図ることが可能です。

[From K.Okano]

〇解析条件  
発熱源 1 W×8個
基板の熱伝導率 16.5 W/(m・K)(面内), 0.25 W/(m・K)(面外)
チップの熱伝導率 0.4 W/(m・K)
環境温度 20 ℃
ファン性能 Qmax : 0.169 m3/min,Pmax : 40 Pa

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