「粉体を動かす」操作は、粉体ハンドリングにおいて最も基本的な操作になります。
例えば、ホッパーから粉体を排出する際にも、重力によってホッパー内を滑るように粉体を動かしていくわけです。
とても基本的な「粉体を動かす」操作ではありますが、その動き方を把握して管理することは非常に困難です。
粉体は、種類や環境によって大きく動き方が異なります。
粉体の動き方を把握するためには、まずは粉体の動きやすさ(流動性)を正しく評価する必要があります。
COLUMN
技術コラム
【粉体】Vol.7 粉体の流動性
粉体の流動性
粉体の流動性とは、粉体の動きやすさを表す性質になります。
流動性が高ければ、粉体を容易に動かすことができ、流動性が低いと粉体を動かすのが困難になります。
そのため、粉体を動かす装置の選定や運転条件の設定には、粉体の流動性の把握が必要不可欠となります。
しかしながら、単に流動性と言っても、測定方法が決まっているわけではありません。
前回までにご紹介した圧縮度や安息角も粉体の流動性を表す指標の一つです。流動性の評価には、様々な指標が用いられており、一意に評価することは困難とされています。
その中でも、総括的に流動性を表す指標として、「Carrの流動性指数」が用いられています。
Carrの流動性指数
「Carrの流動性指数」とは、「圧縮度」「安息角」「スパチュラ角」「凝集度(もしくは均一度)」の4項目を基に算出した粉体の流動性を表す指数になります。
各項目で測定した値を基に0~25の指数を割り当て、4項目の指数を足し合わせて0~100の指数で表したものがCarrの流動性指数となります。
粉体の流動性は、Carrの流動指数によって7段階に分類されます(90~100:最も良好、80~89:良好、 70~79:かなり良好、60~69:普通、40~59:あまり良くない、20~39:不良、0~19:非常に悪い)。
圧縮度
圧縮度は、ゆるみかさ密度とかためかさ密度の差に対する、かためかさ密度の比で表します。
流動性が高い場合には、粉体をかさ密度の測定容器内に静かに充填するだけで、自然に粉体間の隙間が埋まるようになります。
つまり、流動性が高い方がゆるみかさ密度は高くなる傾向にあります。
そのため、流動性が高い場合には、ゆるみかさ密度とかためかさ密度の差が小さくなるので、圧縮度は低くなります。
安息角
安息角は、自然に堆積した粉体が形成する山の斜面と水平面がなす角度のことです。
流動性が高い場合、粉体は転がりやすく、滑りやすいため、低い斜面の角度でも静止することができずに動き出します。
そのため、流動性が高い場合には、安息角が低くなります。
スパチュラ角
スパチュラ角とは、堆積した粉体を水平にした平板で掬い上げた際に形成される斜面と水平面がなす角度のことです。
スパチュラ角は、安息角と類似した指標なので、流動性が高いとスパチュラ角が小さくなります。
そして、一般的に安息角よりも高くなる傾向にあります。
凝集度
凝集度とは、粉体の凝集性を表す指標であり、三種類の目開きが異なるふるいを用いて、ふるい上に残った粉体量を基に算出します。
凝集度の評価では、上段、中断、下段と目開きが細かくなっていくため、各ふるい上に残った粉体量に対して段毎の重みを付けて評価します。
粉体の流動性が高い場合、粉体は各ふるいを通過しやすくなります。
そのため、ふるい上に残る粉体量が少なくなり、凝集度は低くなります。
一方で、粉体の流動性が低い場合、ふるい上に残る粉体量が増えるため、凝集度は高くなります。
凝集度の測定に用いられるふるいの目開きや振動時間は、ゆるみかさ密度とかためかさ密度から設定され、下段のふるいの目開き(最小目開き)は全粒子が通過できるように設定しておきます。
均一度
均一度とは、粒子径の分布を表す指標であり、凝集度と同じようにふるいを用いて測定されます。
先の説明の通り、凝集度では、すべての粒子が通過可能なふるいの目開きを用いて測定します。
そのため、流動性が高い(凝集性がない)場合には、すべてのふるいを通過する粒子が多くなり、正しく測定することが難しくなります。そこで流動性の高い(凝集性がない)粉体に対しては、流動性の評価項目として、凝集度の代わりに均一度を用います。
均一度の定義は、60%の粉体が通過するふるいの目開きに対する10%の粉体が通過するふるいの目開きの比になります。
つまり、50%の粉体が収まる粒子径の範囲から粒子径の均一性を評価します。
例えば、250μmの目開きのふるい上に40%の粉体が残り、150μmの目開きのふるい上に50%の粉体が残った場合を考えると、50%の粉体が150μm-250μmの範囲に存在しており、均一度は1.67(=250/150)となります。
Carrの流動性指数の課題
Carrの流動性指数は、複数の項目を組み合わせた総括的な評価指標となっており、よく整理された指標であることが分かります。
しかしながら、Carrの流動性指数だけで、粉体の流動性を評価するのは十分ではありません。
Carrの流動性指数の評価項目として挙げた「圧縮度」「安息角」「スパチュラ角」「凝集度(もしくは均一度)」は、全て無荷重下の測定となっています。
ここで無荷重下とは、粉体自体の重み以外に強制的な荷重が働いていないということです。
「粉体を動かす」装置の中には、スクリューなどにより粉体に強制的な力を加えた状態になることがあります。
このような荷重がかかった状態では、一般的に粉体の流動性は悪くなります。
そのため、粉体の流動性を評価する際には、実環境下に合わせて、Carrの流動性指数に加えて、荷重下における流動性評価も重要となります。
荷重下における流動性評価には、せん断試験などが用いられます。
[From K. Yamaguchi]
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