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技術コラム

【構造】ひろこの部屋vol.9 材料非線形のイメージをつかもう!

2021年08月05日

材料モデル

線形解析では応力とひずみの関係は比例関係であることが前提となります。応力とひずみの関係をヤング率(ひずみ/応力)という一意の値で指定していることからも理解いただけると思います。

これに対して、応力とひずみの関係が線形にならないのが材料非線形です。非線形材料では材料の特性やその特性を測定する実験方法に合わせて複数の数値モデルが存在します。以下に代表的な材料モデルを紹介します。

●弾性モデル:載荷と除荷が同じ経路、線形材料は弾性モデルの応力とひずみが比例関係にあるモデル
●弾塑性モデル:金属材料の降伏後の挙動を再現できるモデル
●超弾性モデル:ゴムなど比較的小さな応力で大きなひずみが発生するモデル
●粘弾性モデル:荷重の適用される速度によって挙動の変わるモデル
●クリープモデル:一定の応力条件下で生じる時間依存のひずみを再現するモデル

弾塑性材料モデルによる残留応力の確認

L字モデル

線形解析と非線形解析の違いを確認するため、金属材料の降伏応力後の挙動を確認します。

■ 検証内容
右図のL字モデルで上端固定、右端に力を掛けた場合の応力状態について、解析タイプと材料モデルを変えた3つのケースについて確認します。

ケース1:線形解析、線形材料
ケース2:非線形解析、線形材料
ケース3:非線形解析、非線形材料

材料:炭素鋼

非線形解析で行った力の載荷と除荷のグラフ

■ 線形解析と非線形解析の違い

1ステップで計算が行われる線形解析に対し、非線形解析は複数のステップに分けて計算を行います。通常、非線形解析では解析開始を0、解析終了を1として疑似的な時間軸を定義し、力の掛け方の変化や計算ステップを定義します。

右図は今回の非線形解析で行った力の載荷と除荷のグラフです。前半の0から0.5まで2000Nまで力を増加させ、後半0.5から1まで0Nまで力を除荷します。

今回使用した炭素鋼の応力ひずみ曲線グラフ

■ 非線形材料の定義

金属の塑性状態を確認するため、弾塑性モデルを使って計算を行います。弾塑性モデルではヤング率(弾性範囲)、ポアソン比、降伏応力、降伏応力以降の応力ひずみ曲線を登録します。

右図は今回使用した炭素鋼の応力ひずみ曲線です。弾性範囲の挙動はヤング率(205000MPa)に従い、降伏応力(282.6MPa)を超えた範囲は右図の曲線に従います。

■ 解析結果

各ケースの最大載荷時の応力結果は下記の通りです。

各ケースの最大載荷時の応力結果

線形材料を使用しているケース1およびケース2ではR部に降伏応力を超える320MPa程度の応力が発生しています。それに対し、ケース3のR部応力値は降伏応力である282.6MPaとなっています。ケース1とケース2では降伏応力を超えた部分をグレー表示しています。

続いて、非線形解析のケース2とケース3で荷重を除荷した時の応力を比較します。

非線形解析のケース2とケース3で荷重を除荷した時の応力を比較

ケース2はすべて弾性変形として計算されるため、力を除荷すると応力はゼロになります。ケース3では塑性変形を考慮しており、降伏応力を超えた部分に残留応力を確認することができます。

最後に

今回は、視覚的に理解しやすい弾塑性モデルを使用して材料非線形をご紹介しました。
次回は、幾何学非線形をご紹介します。

[From H. Horiuchi]

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