数ある解析のなかで利用者が一番多い構造解析。そのため解析の中では“簡単”というイメージを持つ方が多いです。一方、実際に構造解析を使ったらエラーで計算が停止した、警告が出て計算が正しく行えたか不安など苦労話も多々聞こえてきます。やはり解析と名の付くものは難しいのでしょうか?
COLUMN
技術コラム
【構造】ひろこの部屋vol.14 構造解析は簡単?難しい? エラーの原因を探れ!
エラーでつまずく
構造解析で苦労する部分はいくつかありますが、そのひとつがエラーや警告で解が得られないことがあります。しかも、そのメッセージに解決策が示されていれば対策ができますが、エラー原因しか示されず何をすべきか分からないことがほとんどです。時にはソルバーのメッセージがそのまま表示され意味不明なことも、もはや暗号・・・。
ちなみに、普段解析ツールを扱う私たちもエラーメッセージだけでは原因の特定をできず、設定条件から要因を探るケースが多いです。今回はエラー原因の特定で確認している項目をご紹介します。
1.モデルに不備は無いか
CADアドインの解析ではCADモデルにインポートエラーが残っていて解析に失敗するケースがあります。特にインポートデータを使っている場合は、CADデータとして面落ちなどの不正が無いか確認をします。
また、部品同士が干渉している場合もメッシュが作成できない、力が正しく伝達しないなどの要因につながるため、事前に解消する必要があります。
2.材料の物性値は正しく定義されているか
ユーザー定義で材料を設定した場合、単位換算などで桁数を間違えて入力するケースがあります。この場合、計算値が大きくなりすぎて収束解が得られずエラーになる可能性が考えられます。
また、解析種別によって必要な物性値が異なります。静解析で重力を考慮したいのに密度が定義できていないなど、入力項目が不足している場合も結果が得られません。
3.部品は正しく拘束されているか
構造解析では部品が拘束されていることが前提となっています。(下左図)
拘束が不十分な場合、部品は変形せず剛体移動(下右図)をしてしまいます。3Dモデルの場合、ひとつの部品にはXYZ方向それぞれの並進と回転で計6個の自由度があります。これらの自由度全てを拘束する必要があります。
なお、単一部品の場合はひとつの面に完全固定を定義すれば剛体変位を抑制することができます。一方、アセンブリの解析では各部品に適切な拘束や接触条件が入力されている必要があります。特にクリアランスを含むモデルでは接触面の自動認識が働かず一部の部品が空中浮遊状態になっているケースがあります。この状態は最終形状に近いモデルで計算している場合に多く見受けられます。まずは、力の伝わりがイメージできる程度の部品点数で計算するのがお薦めです。
4.外力の数値や設定場所は正しく定義されているか
これも材料物性値同様、単位換算の計算ミスで想定外の数値が入力されているケースが多いです。また、複数エンティティに一括で入力する場合は、入力値が合計値なのか個々の値なのかも確認します。
その他、形状変更により事前に定義した設定面がリストから外れてしまうこともあります。設定内容は一通り見直しましょう。
5.メッシュ分割はできているか
有限要素法解析ではメッシュが切れないと計算はできません。メッシュ作成時にエラーが出ていなくてもメッシュ図を確認して部品や条件設定面の欠損はないか確認してください。
また、極端に尖った要素や扁平な要素もエラーの要因となることがあります。平均要素サイズの変更やローカルメッシュの設定でできるだけ整ったメッシュを作成してください。一方、要素数(自由度)が多すぎるとメモリ不足により計算できない可能性があります。要素数と要素サイズは全体のバランスを見て調整となりますが、まずは部品点数が少なく細かいフィーチャーのないシンプルなモデルで始めるのが一番お薦めです。
以上が大まかなチェック項目と注意点です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、回数を重ねるうちにエラー要因が分かるようになります。自転車の運転と同じく慣れたら早く目的地にたどり着けるようになります。いつもより遠い目的地を目指してみませんか。
[From H. Horiuchi]
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