今回は、過去のメルマガで好評だった記事から「船の造波抵抗- Froude 数による依存性を求めてみた」をご紹介致します。
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粒子法を用いて、船の造波抵抗を算出する事例をご紹介します。
水上を動く物体が受ける抵抗力の一つに、「造波抵抗」とよばれるものがあります。
船の推進性能の向上には、造波抵抗を低減させることが重要といわれており、船首を球状にするなどの工夫がなされています。
この造波抵抗を語るのに、欠かせないものが無次元数「 Froude数 」です。
たとえば静止している状態から、船を加速させていくと、Froude 数が大きくなり、造波抵抗係数が大きくなります。
しかし、ある Froude 数を超えると、造波抵抗係数が減少するという現象が現れます。
この現象は、「造波抵抗の壁」と呼ばれます。
今回は船の速度を速くした場合、この造波抵抗の壁を再現できるかどうかを検証してみました。
結論として、実際に粒子法を用いた解析でも、造波抵抗の壁を再現することができました。
COLUMN
技術コラム
【粒子法】Vol.12 船の造波抵抗
目的
粒子法を用いて造波抵抗を算出します。
造波抵抗係数の Froude 数による依存性を算出します。
解析形状
※海の設定
海の領域は、仮想的に大きい容器を作成することで設定します。
解析モデル
■ 流体物性値
※表面張力の効果について
表面張力の効果は無視します。
スケールの大きい現象であり、造波抵抗の算出において表面張力の影響は小さいためです。
■ 移動定義
船を移動させる代わりに、流体の方を移動させます。 現実の設定(左図)をモデル化(右図)します。
■ 流入条件
4 パターンの流入速度で解析します。
■ その他
結果
■ 粒子表示
船体にかかる力を算出します。 流速があがると、流体のしぶき具合が増えます。
考察
船体にかかる力を算出します。
■ Froude 数と造波抵抗係数
Froude 数 Fr と造波抵抗係数 の定義は以下です。
Froude 数は、慣性力と重力の比です。
造波抵抗係数は空気抵抗 Cd 値とほぼ同じ概念に基づいた量です。
■ 造波抵抗の算出結果
・ 速度 vs 力
流速があがると、造波抵抗は大きくなります。
・ Froude 数 vs 造波抵抗係数
造波抵抗係数は、Froude 数 Fr = 0.5 でピーク値を持つことがわかっています。[1]
粒子法の解析結果も、この傾向が合致しています。
※船体の浸水表面積 S は、Froude 数によらず一定と仮定しています。
まとめ
粒子法を用いて造波抵抗を算出し、造波抵抗係数のFroude数による依存性を調べました。
結果(定性的)
流速があがると、流体のしぶき具合が増えます。
結果(定量的)
流速があがると、造波抵抗は大きくなります。
造波抵抗係数は、Froude数Fr =0.5でピーク値を持ち、一般的な議論と合致します。
参考文献
[1] 五十嵐 保、杉山 均著、流体工学と伝熱工学のための次元解析活用法、共立出版
[原文: ひっつきもっつき 転載:R.Taniguchi]
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