今回の流体コラムでは、SOLIDWORKS Flow Simulation でファンをシミュレートする方法を紹介します。 SOLIDWORKS Flow Simulation の共役熱伝達の事例をベースとして、ファン境界条件の機能とメッシュ回転を使用して電子機器冷却ファンのパフォーマンスを解析します。
COLUMN
技術コラム
【流体】SOLIDWORKS Flow Simulationを活用したファン性能の検証方法
ファンをシミュレートする方法
・メッシュ回転 (スライディング)
ファンの CAD モデルがある場合は、メッシュ回転を使用してローターの回転をシミュレートできます。 ローターを取り囲む軸対称の形状で回転領域を定義します。
この方法の欠点は、非定常解析でしか使用できないことです。 ファンの回転速度が高く、熱伝達が遅いと、収束するまでに多数の反復が必要となり、計算時間が長くなる可能性があります。
・メッシュ回転 (平均化)
この方法は、定常状態解析で使用できることを除けば、メッシュ回転(スライディング)方法に似ています。 熱伝達解析の場合、定常状態解析により計算時間を短縮できます。
注: メッシュ回転(平均化)は、軸流ファンにのみ使用するべきです。遠心圧縮機などの径流ファンには適しません。
・ファン境界条件
ファン境界条件を使用すると、ファンケース、ハブ、羽などを含む完全なファンの CAD モデルを使用せずに、ファンをシミュレートできます。これにより、非常に複雑な流体流れが起きるファンの羽の周囲に細かいメッシュを作成する必要がなくなります。 解析を大幅に簡素化できます。
SOLIDWORKS のエンジニアリング データベースには、さまざまな事前定義されたファン データが含まれていますが、必要に応じて、次のデータを使用してカスタム ファンを定義することもできます。
• 体積流量と圧力のファンカーブ
• 羽とハブの直径
• 回転速度
今回は、事例に従って、エンジニアリング データベースの Papst 412 データを使用します。
解析概要
・解析モデル
この解析では、SOLIDWORKS Flow Simulation の共役熱伝達事例の CAD モデルを利用します。次の主要コンポーネントを含む電子ボックス
・解析条件
事例に従って、次の解析条件を設定しました。
・ メインチップ: 5W 熱源
・ スモールチップ: 4W 熱源 (×8)
・ コンデンサ: 100°F (37.78°C) (×3)
・ 電源: 120°F (48.89°C)
・ 環境条件: 50°F (10°C)・101,325Pa (1気圧)
・ファン
ファン境界条件のケースでは、ファンモデルを平らな蓋に置き換えます。 次に、Papst 412 ファンの条件を設定します。
メッシュ回転のケースでは、ファン ローターの周囲に軸対称の回転領域を作成します。 回転領域はローターより若干大きいですが、ファンケースとのクリアランスがあります。 メーカーの仕様に従い、回転数を6000rpmに設定しました。
ファン入口の前に球形の蓋を使用し、全圧 1 気圧の境界条件を設定します。 球状の形状により、あらゆる方向から流入する流れをシミュレートできます。 また、発散を避けるために、境界と回転領域の間にある程度の距離を作成します。
結果
3つの方法を定量的に比較するために、次のパラメーターを確認します。
・ メインチップの平均温度
・ スモールチップの平均温度
・ 流出口の体積流量
ファン付近の流跡線は下記の通りです。
メッシュ回転のケース、特に平均化ケースにおいて、流れがより広がることを観察します。さらに、ファン境界条件のケースより流れの回転速度は高くなります。流速分布図でも見られます。そのため、全体的な流れの軌跡が大きく異なり、チップ温度と体積流量の違いにつながります。
まとめ
今回の解析では、SOLIDWORKS Flow Simulation でファンをシミュレートする方法を示しました。各ケースで結果の違いは、次のようないくつかの理由が考えられます。
▼▼▼本解析で使用した製品は下記を参照してください!▼▼▼
・ ファンのCADモデルは主に視覚化を目的とした「外観モデル」です。 ジオメトリ、特に羽の形状は、Papst 412 の空力特性を再現できるほど正確ではありません。
・ 解析を簡素化するために比較的粗いメッシュを使用しました。複雑な流跡線を正確に捉えるには、ファンの周囲の領域でより細かいメッシュが必要になる場合があります。
[From Jason Matthews KOK SHUN]
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