今回はヒステリシス損と渦電流損(および過剰損)をあわせた「鉄損」を計算する際に用いられるスタインメッツの実験式についてご紹介します。
スタインメッツの実験式とは1892年にCharles P. Steinmetzによって提唱された鉄損を求めるための実験式のことです。
この実験式では鉄損を励磁の周波数および最大磁束密度の関数として表現しており、各材料に固有の3つのパラメータによって計算されます。
この実験式は多くの場合において鉄損をよく近似していることで知られています。しかし、この実験式は特定の磁束密度の大きさと周波数の範囲でのみ有効であり、その範囲を超えると正しくないこともまた知られています。
さらにこの実験式は正弦波の励磁のときのみ有効なので、その他の波形で適用することができません。現在ではこれらの適用範囲外における鉄損の計算も可能とする以下の方法が提案されています。
1.スタインメッツの実験式の改良
周波数および最大磁束密度の変わりに、磁束密度の時間変化および磁束密度の変化幅の関数で鉄損を表現することにより正弦波以外の波形にも適応することができます。ただし、直流偏磁には対応することができません。
2.損失図
実験を基に損失図を作成することでスタインメッツの実験式の改良では扱うことができなかった直流偏磁も考慮した鉄損を求めることができる手法です。この損失図では磁束密度の変化幅や周波数、直流偏磁といったパラメータによってマッピングされます。そのため、実験により幅広い範囲のパラメータを調査する必要があります。
3.鉄損の分類
鉄損をヒステリシス損や渦電流損に分類して各機構に基づいて計算することにより全体の鉄損を求める手法です。渦電流損の場合には最大磁束密度や周波数、形状パラメータ、電気抵抗率によってヒステリシス損の場合にはヒステリシスループを含むB-H曲線によって損失を求めることができます。
この様に実験式には適用範囲が決まっているため、式の適用には条件に基づく判断が必要となります。
[From K.Yamaguchi ]
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【電磁界】電磁界のお話 Vol.6|スタインメッツの実験式
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