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技術コラム

【流体】VOF法とは?

2025年02月04日

VOF法とは?

VOF法(流体体積法、Volume of Fluid Method)は、異なる2つの非混和性流体(例えば、水と空気)の界面を計算するための数値手法です。特に、波や水面などの自由表面をシミュレートするためによく使われています。

体積率(Volume Fraction, α)

各計算セル(格子)の中で、水や空気のような特定の流体が占める体積の割合をαというパラメータで表現します。αの値は0から1の範囲を取り、以下のように解釈されます


•α=1: 完全に水で満たされたセル。
•α=0: 完全に空気で満たされたセル。
•0<α<1: 水と空気の界面が存在するセル。

界面追跡

VOF法では、体積率αの輸送方程式を解くことで、界面の動きを追跡します。輸送方程式は次のように表されます

uは流速ベクトルです。これにより、流体の動きに伴って水と空気の界面がどのように移動するかを計算できます。

風車周りの水と空気の流れのシミュレーションでの利用方法

風車(特に洋上風力発電)の解析では、水面(自由表面)の動きや風の影響による波の生成、風車のパフォーマンスなどを評価する必要があります。ここで、VOF法の活用例を紹介します。


1.波と風の相互作用の解析
洋上風車の周りでは、風によって波が生成され、波によって風が乱れます。この複雑な相互作用をシミュレーションするために、VOF法を使用して水と空気の界面を追跡します。


2.浮体式風車の動的解析
浮体式風車の場合、波の影響で風車が揺れることがあり、この揺れが風車の性能や耐久性に影響を与えます。VOF法を用いることで、水の動きと風車の動的な応答を詳細にシミュレートできます。


3.界面の定義:
水面(自由表面)は、VOF法の体積率α=0.5を用いて定義されることが一般的です。これにより、水と空気の境界が明確になり、波やスプレーの生成を正確に解析できます。


4.水と空気から風車に作用する力の計算と流体-構造連成解析
VOF法を用いることで、風車に対する水と空気の圧力やせん断応力を計算し、これらを基に風車ブレードやタワーに作用する流体力を求めます。この力は、流体の圧力分布や風速、水流の強さに応じて変化します。計算された力を風車構造モデルにインポートし、流体-構造連成解析(FSI: Fluid-Structure Interaction)を実施することで、風や波による構造物への負荷や変形、応力分布を詳細に解析できます。これにより、風車の耐久性や最適な設計パラメータを評価することが可能になります。

3DEXPERIENCE Fluid Dynamics Engineer Role(FMK)でのVOF解析

3DEXPERIENCE Fluid Dynamics Engineer Role (FMK) を使用して、洋上風車周りの水と空気の流れをモデリングしました。本シミュレーションでは、リアルな洋上風車の基礎構造とタワーモデルを用いて解析を行います。特に、日本の沿岸環境に適したジャケット式基礎モデルを採用しています。

ジャケット式基礎は構造が複雑であるため、製造や設置に多くの労力が必要となり、工数が増えるという課題があります。一方で、地盤条件の変動に対して非常に強く、40mから100mの深さまでの深海域でも運用が可能です。また、モノパイル基礎と比較して、使用する鋼材の量が少なくても高い剛性を持つため、日本のような深海域に適した基礎形式となっています。

私たちが使用するモデルは、流れのシミュレーションに大きな影響を与えない微小な部品を削除した簡略化モデルです。これにより、メッシュモデルのサイズを抑え、計算コストを削減しています。おおよその寸法として、基礎とタワーの高さは140メートルで、そのうち10メートルは地中に埋まっています。残りの部分では、35メートルが水中にあり、それ以外は空気中に露出しています。以下にモデル画像を示します。

CADモデルを3DEXPERIENCEにインポートした後、Fluid Dynamics Engineer (FMK) のロールでVOF法を使用し、風車周辺の水と空気の流れおよびその界面を解析します。以下のアニメーションでは、シミュレーションによって得られた10秒間の流れを確認することができます。


Figure 1. 全体図



Figure 2. アイソメトリックビュー



Figure 3. サイドビュー



Figure 4. トップビュー


また、基礎およびタワーに対して、流速10 m/sの流れによって生じる作用力を計算しました。構造物にかかる力の発生とその変動については、以下の図に示されています。




Figure 5. 水と空気による力の合計の時刻歴プロット




Figure 6. 水と空気による力の直交成分の時刻歴プロット

まとめ

VOF法は、風車周りの水と空気の流れを解析する上で非常に有効な手法です。波の影響を正確に捉えることができるため、風車の設計や性能評価、さらには耐久性の解析に役立ちます。
本ケーススタディでは、洋上風車周りの水と空気の流れをシミュレーションするために、3DEXPERIENCEのFluid Dynamics Engineer(FMK)ロールを活用し、VOF法を用いた解析を行いました。シミュレーションでは、日本の沿岸環境に適したジャケット式基礎モデルを採用し、基礎やタワーに対する流れの影響を簡略化したモデルで効率的に解析しました。また、流速10 m/sの条件下で基礎およびタワーに作用する力を計算し、その発生と変動の挙動を示しました。本研究は、深海域での風車設計や性能評価における有効な知見を提供します。
何か具体的なシミュレーションに関する質問があれば、お聞かせください。

[From Alireza Emami Javid]

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