苦手だらけのCAE
皆さんこんにちは、SSKです。
15年ぶりにSMILEさんから返ってきたパスを受け取って今月の「CAEエンジニアの応援歌」をお送りしたいと思います。
CAEそのものは単なるツールであり、手段の一つに過ぎない狭い世界ではありますが、業務で使いこなそうとすると厄介なことも多く、思わぬ深みにハマった経験がある方も多いのではないでしょうか。
職場内に仲間がたくさんいる場合は幸運ですが、孤軍奮闘している方もこれまで多く見てきているので、「一人じゃないよ」「同じように悩んだり困ったりしている仲間がいるよ」というメッセージをお届けできれば嬉しいです。
私にとってのCAE業務は、苦手と真正面から取り組んで乗り越えることの連続でした
- ・プログラムを組んだことがない。読めない。 → 2次元、3次元の差分法熱伝導計算ソフトをゼロからコーディング
- ・数学苦手 → 解析ソフトの解の精度と妥当性を検証する
- ・熱も電気も苦手 → 熱回路シミュレーションと実測結果の検証から熱回路の有効性を示す
- ・計算工学って難しい → CAE技術者認定資格 上級アナリスト取得(苦節6年)
- ・制御工学知らない → システム同定による伝達関数モデリング&制御シミュレーションソフトをゼロからコーディング
- ・社内にCAE相談相手がいない → 社外のCAE研究会に参加して相談相手を得る
- ・自分の成果を人に伝えるのが下手 → 300人の前でユーザー会講演 & 雑誌記事寄稿
…振り返ればまだまだいろいろありますが、とにかくCAEのおかげで、数多くの“初めて”に挑戦する機会を得て、苦手なことでも飛び込んでみれば多くの体験と収穫を得ることができました。
ありがたいことです。
そして、今年も苦手というか、これまで避けていたことに挑戦しようと思っているので、それを少し紹介したいと思います。
CAEに携わる中で、様々な苦労や面白さを体験してきましたが、いまだに解消できていない問題があります。それは、実機試験とCAE結果の整合性です。
時間的に余裕のない状態で降りかかってくる解析業務では、可能な範囲ですぐに回答できることが重宝がられます。
設計判断に有効な回答さえできれば実積としては積まれていくのでこれまで何とか存在できていますが、残念ながら実測と同じ判断基準でCAE結果を活用できていないことが多いのが実情です。
これは、難易度がとても高い、というよりは、とても面倒な作業になるという理由で、実機試験とCAE結果の整合性に真正面から向き合ってこなかったからと猛省を込めて認識しています。
先月参加したセミナーでも、実測との整合性が充分にとれていることを前提に設計活用が進められている事例を複数聴講しました。
昨年の計算工学講演会の中で耳の痛い指摘がありました。
「“実験を代替できるだけの精度がないからCAEは使えない”という状況に対し、“精度が不十分でも使う方策がある”と回答するのは間違いではないし、方法論も明確にあるものの、正面回答をある種回避しているような感覚を覚え…」
痛すぎて返す言葉が見つかりません。。
そんなわけで、これから実機試験とCAEの整合性を検証し、精度を保証できる解析ワークフローの確立に取り組むことになりました。
文字数の関係で詳しいことをお話しできませんが、取組みの中で得られた気付きや面白事件があればまたご紹介の機会があるかもしれません。
皆さんの職場、業務では実機試験とCAE結果の十分な整合性がとれているでしょうか?自信をもってCAE結果から設計判断ができているでしょうか?
ありがたいことに、計算ソフトは扱いやすく性能の良いものがたくさん出ています。CAE先陣の事例には実機試験とCAEの整合性をどのようにとったのかという経験談も豊富に共有されています。
だから、やればできるはずのこと。でも、自社業務で同じようにできるか?以前に失敗した経験があるのでは?と、怯んでしまいます。
もし、これで整合性がとれなかったら、今度こそ「CAEは使えない」が固定化してしまうのでは? 失業の危機です!
でもでも、これを解決しておかなければ、これからのCAE活用には限界が来てしまいます。なので、やります。
実機試験とCAE結果の整合性に今まさに取り組んでいるという方、ぜひ一緒に最後まで頑張りましょう。必ずできます!
既に乗り越えた方、アドバイスと応援をお願いします!
励ましを届けたいと思って書き始めましたが、応援してほしい気持ちも募ってしまいました。
15年ぶりにこのコラムのパスを受け取ったことで、過去を振り返る機会になりました。これまでCAEをきっかけに出会えたたくさんの方たちに支えられて来たのだなと感謝の気持ちでいっぱいです。皆さんの顔を頭に浮かべながらだったら頑張れそうです。
たくさんの出会いの中でも一番最初に思い浮かぶ、私のCAEヒストリーに大きな影響を与えてくれた方にこのコラムの次のパスを渡したいと思います。
いつもパワフルに、心から私を鼓舞してくれるMt.Fujiさんからの応援歌を心待ちに、今日も厄介で面倒で愛しいCAE業務に励みます。
[ 2025/4/3 from SSK ]