
近年の電子機器設計において問題となっている要素として「放熱」があげられます。放熱が適切に制御されていない場合、製品の機能低下や故障、寿命低下を招きます。したがって、放熱促進を目的にファンやヒートシンク、TIMなどの様々な機構が実装されています。これらの放熱機構の中でも今回のコラムでは「TIM」に注目してみました。
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近年の電子機器設計において問題となっている要素として「放熱」があげられます。放熱が適切に制御されていない場合、製品の機能低下や故障、寿命低下を招きます。したがって、放熱促進を目的にファンやヒートシンク、TIMなどの様々な機構が実装されています。これらの放熱機構の中でも今回のコラムでは「TIM」に注目してみました。
TIM(=Thermal Interface Materials)とは、電子機器内部の発熱源と放熱部の間などに挟み込んで使用する材料の総称です。具体的には、ICチップとヒートシンクの間に挿入することで接触熱抵抗を低減し、効率的に放熱するアイテムなどです。表1に示すように、TIMには液状のサーマルグリースや固体の熱伝導シート、相変化するものなど、様々な種類があります。要求される放熱性能や搭載環境によって、TIMを選定します。
(熱抵抗:熱の伝わりにくさの値)
(接触熱抵抗:固体同士の界面における熱抵抗)
電子機器の小型化や半導体の高集積化などに伴う熱対策のために、TIMの需要は拡大しています。また、近年普及が進んでいる電気自動車 や5G通信機器の製造分野おいても需要が高まっています。電気自動車の場合ではエンジン車と異なりバッテリー、インバーター、モーターなどの発熱源があり、それらと冷却部材の間にTIMを充填することで放熱性能を高めています。自動車業界では放熱ギャップフィラーの注目が高まっているようです。これは、放熱ギャップフィラーがディスペンサー※を用いて自動実装可能であり、量産ラインへの導入が容易なためです。このように、業界のトレンドや使用環境によって適したTIMが選定・実装されています。
(※ディスペンサー:液体や高粘度のペーストなどを定量、定速で塗布する装置)
熱設計の際のTIMに関する検討事項としては、発熱源の発熱量や温度、TIMの種類や性能を考慮した各部品の配置などが挙げられます。具体的には、「TIMによって発熱源の温度をどの程度下げることができるのか?」「素子の発熱が周辺素子にどの程度影響するか?」「どのようなサイズ・素材のTIMを使用すべきか?」など、検討するパターンは非常に多く複雑となります。そこで、今回はTIMを実装した電子機器のモデルで解析を行い、放熱に及ぼすTIMの有無や性能の影響を検討しました。
■ 解析概要
設計者向け熱流体解析ソフト”Simcenter FLOEFD”を使用し、簡易的なECU(=Electronic Control Unit)を対象としてTIMによる放熱の影響を解析しました。
■ 解析モデル
使用したモデルを図2に示します。黒枠は計算領域です。本モデルは電子基板と筐体、ケーブルからなります。筐体の上側面にはヒートシンクが付いています。水平配置、自然空冷を想定しています。
■ 解析結果
図5に基板の表面温度のコンターを、表4にT1、C1、C2の最大温度を示します。
今回のコラムでは、熱設計におけるTIMについて取り上げ、解析ではTIMの有無や熱伝導率の違いによる放熱効果の違いを検討しました。
[From T.Karatsu, K.Sugahara]
・参考文献
国峰尚樹 エレクトロニクスのための熱設計完全制覇 日刊工業新聞 2018
・ 熱設計支援サービス
https://www.sbd.jp/consulting/thermal_design_consulting.html
・ 3次元CAD統合型 熱流体解析ソフトウェア|Simcenter FLOEFDシリーズ
https://www.sbd.jp/products/flow/floefd.html
解析タイプ | 内部流れ+ふく射+重力考慮、定常解析 |
---|---|
デフォルト流体 | 空気 |
環境温度 | 25℃ |
外部壁面熱条件 | 熱伝達係数5W/(m2・K) |
TIMの熱伝導率 | 1.5 W/(m・K) 6.0 W/(m・K) ※ケース3のみ |
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