前々回は、電子機器の熱設計の課題と目指す姿。前回は、設計コストの大幅な削減と品質担保を実現するためには、高精度な伝熱解析技術によるフロントローディングが重要であることをまとめました。
三次元設計が一般化した現在、電子機器の温度予測に熱解析ツールを活用されている企業・部門も多いのではないでしょうか。一方で熱解析が目途付けに留まり「熱解析の高精度化」が進んでいないという話もしばしば伺います。
COLUMN
技術コラム
実測と解析の乖離検証のポイント【熱設計vol.3】
伝熱解析は高精度か
伝熱のメカニズムは伝導・対流・ふく射の3種類しかありません。そして現在の解析ツールは3種類の伝熱を表現することができます。そのため放熱構造や電子部品の内部構造などを詳細に再現できれば、その解析結果は高精度なものとなります。
しかし、電子機器は複雑な放熱経路をもちます。更に強度解析と異なり部品が小さいから隙間が狭いから簡略化できるかと言うと、そうはいきません。発熱密度の観点から逆に小さい部品ほど気をつけてモデル化していく必要があります。下図に示すような表面実装パッケージが増加しており電子部品と基板の放熱経路は微小化しており詳細モデルの作成を困難にしています。電子機器の構成要素を全て詳細にモデル化することは解析規模の観点からも現実的ではありません。そこで私たちは、実機をベースにした解析モデルの構築による「高精度化」をお薦めしています。
乖離検証の流れ
実機をベースにした解析モデルの構築方法の基本は、「シンプルから」だと私たちは考えます。一般にモデルが簡素化され解析のメッシュが粗いと実際よりも温度が低めにでます。更に温度が低め=危険側の結果とも言えるため、シンプルなモデル化に抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし乖離検証において、モデル化の詳細度を上げると温度が上がるはずという拠り所があることは、乖離検証を進めるにあたって重要なポイントとなります。
私たちの熱設計コンサルでは、電子機器をシンプルに捉えることと、機器を構成する部品をシンプルに捉えることからスタートし、乖離検証を進めていきます。
乖離検証の全体の流れを下図に示します。
STEP1は、電子機器から筐体を除いた実装基板での乖離検証です。サーモグラフィーの計測と伝熱解析の結果を比較し、解析モデルの詳細度を上げていきます。
STEP2では、筐体や放熱材料などを加えた実製品を対象にします。ここで熱電対を使った計測と伝熱解析の結果を比較します。STEP1で基板レベルの乖離検証が完了していることで、誤差要因の特定がスムーズになります。
STEP3では、ECUの搭載環境など製品が使用される環境を再現するためのモデル化や設計検討モデルを作成します。STEP1・2の解析規模は半日から1日程度になりますので、設計上流でのレイアウト検討や最適化ツールと組み合わせるためのモデル化の規模縮小に取り組む訳です。
乖離検証のポイント
実際に私たちが作成した簡易ECUでの解析モデルの構築や実験については、項を改め紹介させてください。ここでは乖離検証のポイントを示します。
① 測定の精度向上:サーモグラフィーおよび熱電対測定にも多くのノウハウがあります。
② 発熱量・物性値の特定:精度向上には発熱量の正確な予測が一番重要です。
③ 解析モデル精度向上:温度分布の傾向をあわせてから、部品の誤差を解消していきます。
近年の電子機器の高度化は実装基板のサイズアップや部品点数の増加につながっています。そのため、主要な部品を模擬配置した評価用基板や筐体を使った乖離検証を提案することも増えています。
まとめ
今回は、熱設計のフロントローディングを実現するために必要な2つのうち「実測と解析で比較して乖離が少ない高精度な伝熱解析技術」について、乖離検証の概要についてまとめました。皆さんの電子機器の設計を変える熱設計コンサルにご興味を持っていただけましたら、こちら(技術支援サービスのご相談)からお気軽にお問い合わせください。
次回は、「過去の技術を蓄積・整備した解析の活用体制の強化」に関連し、熱技術組織の構築と教育についてまとめていきます。
[From M.Mori]
参考文献
[1]篠田卓也,自動車エレクトロニクス「伝熱設計」の基礎知識 -小型高性能化する自動車用電子制御ユニット(ECU)の熱対策技術-,日刊工業新聞社,2021
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