前回は、電子機器の熱がなぜここまで設計者を悩ます問題になっているのかをまとめました。
今回は熱設計のゴールとそこに至るための具体策をまとめます。
COLUMN
技術コラム
熱設計のゴールとは?【熱設計vol.2】
熱設計の目指す姿
電子機器は複雑な放熱経路をもっているため熱設計の難易度が高く、最初の試作設計が終わった後に放熱対策することが多くありました。放熱対策が後工程に行われ、そこで温度保証を満たしていないことがわかると大きな手戻りに繋がります。これにより納期遅れやリードタイムの超過が発生してしまいます。
この状況を解決するには、具体的に何を実現すればよいのでしょうか。
その一つが、設計業務のフロントローディングです。つまり、開発・初期設計段階で放熱対策を実施し後工程での手戻りを削減すること、それを実現する業務フローを確立することになります。
フロントローディングを実現するためには
熱設計におけるフロントローディングを実現するためには、まず、実験と解析の乖離が少ない状態を目指す必要があります。そのためには下記の2つが重要です。
1 熱解析の高精度化
2 過去の技術を蓄積・整備した解析の活用体制の強化
この2つを実現すると熱設計のフロントローディングだけでなく、解析結果に対する考察や現象の分析が可能になります。そういった考察や分析があれば、顧客要求に対して、解析をベースに短期間で回答をしたうえで、要件のすり合わせができます。
「熱解析の高精度化」「過去の技術を蓄積・整備した解析の活用体制の強化」を実施すれば、業務遂行力や短期開発力をアピールし、自社・取引先双方の開発費低減が提案できるようになります。
1 熱解析の高精度化
熱解析の精度が高いとはどういう状態を指すのでしょうか。ECUを例にすれば、「プリント基板のアートワーク設計をする前に、ECUに実装している素子のスペックの保障温度以内に抑えることができること」と言えます。熱解析の精度を高めていくには、下記が重要です。
・正確な入力値:材料の物性値
・高精度な解析:素子ごとの電力把握
ECUの熱解析の精度を高めるためには、まず材料の物性値や素子ごとの電力などについて、実験データと原理を基にし製品におこる現象を明らかにします。そして、放熱に影響する因子を特定します。それから要求仕様の最大・最小の範囲で解析をし、すべての要求に対して問題ない設計を実施します。このステップが熱解析の精度を高めることに繋がります。
さらに、最適化ツール・熱解析・実験データなどあらゆるデータを組み込んだ連成解析が可能になれば、熱解析の精度はさらに高めることができます。
2 過去の技術を蓄積・整備した解析の活用体制の強化
フロントローディングを実現するためには、1を実施したうえで、シミュレーションを活用できるようにノウハウが整備されていることや、電子設計・機械設計・解析者の役割分担を明確にすることなど、シミュレーションを最大限活用する体制が整っていることも重要です。
まとめ
今回は電子機器の熱問題に対処していくには、熱設計のフロントローディングが重要であることをまとめました。
次回は、熱設計のフロントローディングを実現するために必要な「実験と解析で比較して乖離が少ない高精度な伝熱解析技術」について、乖離検証の流れやトレンドについてまとめていきます。
[From Y.Komiyama]
参考文献
[1]篠田卓也,自動車エレクトロニクス「伝熱設計」の基礎知識 -小型高性能化する自動車用電子制御ユニット(ECU)の熱対策技術-,日刊工業新聞社,2021
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