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技術コラム

熱流体解析における半導体部品のモデル化【熱設計vol.10】

2024年12月11日

はじめに

画像 熱流体解析における半導体部品のモデル化

昨今、電子機器の小型化、高密度化、厳しい使用環境により、電子部品の選定やレイアウト、基板設計において熱の問題は避けて通れなくなっています。このような背景から、熱流体解析ソフトを活用し、設計段階で妥当性や方向性を判断する重要性が高まっています。しかし電子機器の熱流体解析を行うにあたり、半導体部品のモデル化で悩まれている方も多いのではないでしょうか。そこで、今回の熱設計コラムでは半導体部品のモデル化について解説いたします。

半導体部品のモデル化 各手法の特徴

半導体部品は非常に微細で複雑な構造となっています。装置に実装した半導体部品を詳細にモデル化すると解析規模が極端に大きくなり、計算に時間がかかります。また、半導体部品の内部構造や物性値は一般に非公開です。そこで半導体部品を小規模なモデルに変換することが重要になります。半導体部品のモデル化方法は主に単一ブロックモデル、2ブロックモデル、詳細モデル、熱回路モデルがあります。各手法の特徴を以下の表にまとめます。



熱回路モデル

半導体部品は部品の構造や物性値は非公開であることの方が一般的です。そこで、構造モデルではなく物理モデルとして部品メーカーが提供できる「熱回路モデル」が考案されています。代表例として2抵抗モデルとDELPHIモデル、DSRCモデルを紹介します。


・ 2抵抗モデル(定常解析のみ)
 半導体部品内部の伝熱特性をジャンクション-ケース表面の熱抵抗θjcとジャンクション-基板表面の熱抵抗θjbの2つの熱抵抗で表現するモデルです。半導体パッケージメーカーから抵抗値を入手します。単一のブロックによるモデルでは求められないジャンクション温度を求めることができます。



・ DELPHIモデル(定常解析のみ)
部品メーカーがパッケージ構造や仕様を公開せずに、高精度の熱解析ができる「多抵抗モデル」をセットメーカーに提供することが目的です。「節点」とこれらを繋ぐ「熱抵抗」で構成される熱抵抗回路網で部品を表現します。
最近ではDELPHIモデルを提供する半導体メーカーも増えてきており、モデルを入手すれば2抵抗モデルよりも高精度な解析が期待できます。DELPHIモデルの読み込みが可能で、熱抵抗回路モデルを扱えるソフトが必要となります。


・ DSRCモデル(過渡解析に対応)
ノートPCのターボブーストや、ミリ秒・マイクロ秒で駆動する車載ECU、通信機器では、温度上昇を 正確に把握するために、時間で変化する発熱を考慮した熱解析のニーズが高まっています。
『DSRCモデル』は、半導体メーカーより入手できるデータシートの情報(過渡熱抵抗vsパルス周波 数)から熱抵抗と熱容量を算出するモデルです。 過渡(非定常)熱解析の精度とモデル作成の容易さが両立できる手法としてJEITA (電子情報技術 産業協会)が標準化を推進しています。


※DSRCモデルの構築に関するお問合せは下記からお知らせください。


電子部品のモデル化 検証事例

サンプルECUを作成し、電子部品や基板のモデル化方法、および発熱量の見直しによる実測と解析の乖離検証を行った事例を下記URLよりダウンロードいただけます。

まとめ

今回の熱設計コラムでは熱流体解析における半導体部品のモデル化についてご説明いたしました。電子機器の解析モデル構築や実測の精度向上等、熱設計におけるお悩みがございましたらご相談ください。

[From K.Okano]

・参考文献
1)国峰尚樹 エレクトロニクスのための熱設計完全制覇 日刊工業新聞 2018

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