昨今、電子機器の放熱設計の重要性が増しています。
電子機器の”熱”は昔からあったはずですが、なぜここまで設計者を悩ます問題になっているのでしょうか。
COLUMN
技術コラム
電子機器の設計者を悩ます熱【熱設計vol.1】
なぜ熱が問題になったのか
自動車はCASEによる機能増加により、今まで以上に多くのセンサやCPU・GPUが実装されたECUが搭載されるようになりました。そして、1台の車により多くのECUを搭載し、それら1つ1つにより複雑な制御が求められています。今後、自動運転などのエレクトロニクス化により、さらに20個ほどECUの搭載量が増加すると考えられます。ECUの設置場所が足りないため、ゾーンECU・モビリティコンピュータなど複数のECUを統合することになります。このことにより、局所的に部品が密集して実装されていくことになります。つまりは、発熱密度が高くなり、部品の温度保証を満足させるのに苦労するようになっています。
そのなかでも特に苦労する要因が、パワー半導体デバイスです。CASEによる機能増加により、これまで適用されていなかった装置・機器分野にもパワー半導体デバイスの利用が急速に増加することが見込まれます。
電子機器の熱問題の主な要因
・ECUの小型化
・制御の高速化
ECUの小型化と制御の高速化が重なり、実装されている半導体の発熱量および発熱密度(単位面積あたりの消費エネルギー量)の増加への対応が、設計者に求められるようになっています。
放熱設計の課題
発熱量および発熱密度の増加への対策をするにあたり、いわゆる放熱設計を進めていくことになります。
熱の伝わり方は3つの基本形式(伝導、対流、ふく射)です。これらに対応すればよいのですが、そこまで単純ではありません。放熱経路はとても複雑で不明確な課題が多いです。
放熱設計の悩み
◆熱源の特定が難しい
◆取り付け面温度や放熱材の位置、熱抵抗など伝熱に寄与する設計変数が多く絡み合って、どこの熱抵抗が放熱に対してネックになっているかわかり辛い。
◆同じECUを搭載しても、搭載場所や設置している部材の材質で放熱性能が変わってくる。
◆同じECUでも制御仕様によるアクチュエータ駆動タイミングが異なるため発熱量に違いがでてくる。
◆プリント基板の配線パターン等の引き回し(アートワーク)を設計する段階では発熱量を把握しにくい。
◆設計段階ではECU制御の要件が未確定である
◆部品選定による設計開発コストが膨らみ、利益がとんでしまう
◆競争による、開発の短期化
放熱設計は、これらの悩み・難題を解決し、すべての機種で満足いくように設計する必要があります。そのため、複雑な放熱経路を推測するより実験検証に頼ることになり、実験コストが大きくかさんでしまうのが実情です。
放熱設計の理想は何か?
こうした厄介さもあり、車載機器の伝熱設計は後手に回りやすく、最初の試作設計完了後に放熱対策するのが常でした。後手になる伝熱設計の流れを変えるには、具体的に何を実現すればよいのでしょうか。
その答えを一言でいうならば、「放熱に影響する因子を特定したうえで、要求仕様の最大、最小の範囲で計算して、すべて問題ない設計にしていくこと」「最適化ツール・伝熱解析および実験データを利用した複数の場の相互作用を組み込んだ連成解析を可能とすること」です。これらが実現できれば、業務遂行力や短期開発力を提示して、自社・取引先双方の開発費低減が提案できるようになります。
具体的にどうするかは次回以降ご説明します。
[From Y.Komiyama]
参考文献
[1]篠田卓也,自動車エレクトロニクス「伝熱設計」の基礎知識 -小型高性能化する自動車用電子制御ユニット(ECU)の熱対策技術-,日刊工業新聞社,2021
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