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技術コラム

【粉体】Vol9. DEMを用いた粉のシミュレーション:はたらく力 接触力

2022年02月17日

粉へはたらく力

前回は粉のシミュレーション手法DEMで扱う粉の運動についてご紹介しました。このシミュレーション手法において粉の運動は並進運動と回転運動の組み合わせであらわされており、それぞれの運動の式も【動きにくさ】、【加速度】、【はたらく力】であらわされるようなとてもシンプルな形で表現されていることが分かりました。

粉の運動を考える場合、多くの力を考慮しなければなりません。つまり運動の式中の「はたらく力の項」として考える要因が多いということです。考えられる力として、「重力」や粉同士の「付着力」、流体を考慮する時は「流体抗力」等、挙げだしたらキリがありません。多くの要因の中でも、粉同士の【接触力】は必ずと言っていいほど考慮するものであり、DEMの計算の特徴的な部分でもあります。
そこで、今回は粉にはたらく力の中でも特に重要な接触することにより生じる力【接触力】に注目してご紹介していこうと思います。

接触力

接触力は二つに分けて考えることができます。接触した面に対して法線方向に働く【法線方向】の接触力、接触した方向に対して接線方向に働く【接線方向】の接触力を合わせて接触力として扱います。それぞれの力の方向として、法線方向の力は粒子の中心同士を結んだ線上で作用する力、接線方向の力は粒子間に紙を挟んだ時その紙の面上で作用する力といったイメージでしょうか。
接触力の式としても下記に示すように、法線方向の接触力と接線方向の接触力の足し合わせで記述されます。



それぞれの方向の接触力についてさらに詳しく紹介します!



法線方向接触力

接触面に対して法線方向の接触力は粒子同士の位置から決まる【静的】な法線方向接触力と粒子同士の速度差から決まる【動的】な法線方向接触力に分けることができます。



・静的な法線方向接触力
DEMの計算で考える粒子の特徴として、重なりについては特に制限されていないことが挙げられます。壁や粒子同士で重なりが発生することが許されている体系となっているのですが、この理由は接触力を計算するうえで重なり量を活用しているからです。
法線方向の接触力の中でも静的な成分については、粒子の重なりに応じて力が計算されます。重なりが大きいほど大きな力で反発するような性質となっています。




・動的な法線方向接触力
法線方向の接触力の中でも動的な成分については粒子の速度差に応じて力が計算されます。速度差が大きいほど粒子に対して大きな力がはたらくような性質となっています。
また、速度差を考えていますので、自分が相手の粒子よりも速いのか遅いのかによっても力の方向が変わってきます。




接線方向接触力

接触面に対して接線方向の接触力についても法線方向の力の考え方と同様の考え方で成り立っており、粒子同士の位置から決まる【静的】な接線方向接触力と粒子同士の速度差から決まる【動的】な接線方向接触力に分けることができます。



・静的な接線方向接触力
接線方向の接触力の中でも静的な成分については、粒子の接触点の移動距離に応じて力が計算されます。この移動距離が大きいほど大きな力で反発するような性質となっています。



・動的な接線方向接触力
接線方向の接触力の中でも動的な成分については法線方向の考え方とほぼ同様で、粒子の速度差に応じて力が計算されます。速度差が大きいほど粒子に対して大きな力がはたらくような性質となっています。ただし、考慮する速度の方向が異なっています。法線方向の動的接触力と接線方向の動的接触力それぞれにおいて力の方向の速度を基に計算を行っています。



ちょこっとメモ:滑りが生じるときの接線方向接触力

今回の紹介の中では接線接触力を考慮する中で、粒子同士がこすれるような【滑り】状態は考えていませんでした。もし滑りを考慮する場合はどのような方法で接線方向接触力を計算するのでしょうか?
滑りが生じている場合、粒子間の摩擦力を接線方向接触力として計算します。つまり、すべりが生じる前後で用いている式が変化するということです。滑り前後では現象としても異なっているので挙動を表現する式が変わっているという自然な考え方だと思います。



さいごに

このように、接触力は法線方向と接線方向の力に分けられ、さらにそこから重なり距離から考える静的な接触力と粒子同士の速度差から考える動的な接触力に分けて考えられることを説明しました。



次回は接触力以外のはたらく力である【ファンデルワールス力】と【液架橋力】について紹介します。次回をお楽しみに!

[From S. Kato]

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