今回は、データをコンピューターで扱える形に変換する【離散化】操作のうち、時間方向への離散化について解説を行っていきます。離散化に関する基礎的な部分については、こちらの記事(https://www.sbd.jp/column/powder_vol20_discretization_basic.html)を、空間の離散化についてはこちらの記事(https://www.sbd.jp/column/powder_vol21_discretization_space.html)をご覧ください!
COLUMN
技術コラム
【粉体】Vol22. DEMを用いた粉のシミュレーション:離散化 時間編
現象をコマ送りで捉えてみよう!
時間方向に離散化を行うことは、イメージとして滑らかで連続的な映像を1コマ1コマの静止画像へ分割して捉えることに対応します。
例として、1次元の空間における波の伝播の様子を考えてみましょう。
波が滑らかに伝わっていく様子も離散化することで、時刻によって波の位置が徐々に変化していく静止画として表すことができます。ここで、 = 1, = 2などのある瞬間的な時間のことをタイムステップ、コマ同士の時間の間隔Δ を時間刻み幅と呼びます。
シミュレーションでは一般的に時間刻み幅を細かく取るほど、より短い時間での現象の変化まで捉えられるようになるため精度が向上しますが、計算時間も比例して長くなってしまうため、問題設定に合わせて適切に設定する必要があります。
陽解法と陰解法
もう少し踏みこんだ内容を考えてみましょう。時間方向離散化の具体的な計算方法は、大きく分けて2種類あります。それらの違いを、先ほどの1次元の波の伝播を例に解説します。
・陽解法
次のタイムステップの状態を予測する際に、現在のタイムステップの空間的な情報のみから推定する手法です。図は次のタイムステップでの計算点の変化を計算する際の、計算の影響の流れを表しています。図中左側の陽解法において、3本の計算の流れを表す青矢印はいずれも現在の= タイムステップから= +1 タイムステップへと計算を行っています。(計算の流れを言葉で表現すると、「= +1 タイムステップにおける計算点 の状態変化は、= タイムステップでの自身と両隣の計算点, の情報から計算できる」といえる。)
陽解法の特徴として、1回あたりの計算ではすべて既知である現在の情報のみから未来を予測する単純計算のため、計算に大きなメモリを必要とせず高速に計算できるというメリットがあります。加えて、非線形性など多種多様な問題にも強い解析手法です。
一方、精度や計算の安定性があまり良くないので注意が必要です。特に計算安定のために時間刻み幅を小さく取ることで、繰り返し計算の回数が増えてしまい、結果として全体の計算時間が長くなることもあります。
・陰解法
次のタイムステップの状態を予測する際に、現在と未来のタイムステップ両方の空間的な情報から、未来の空間的な情報を推定する手法です。陽解法と同様に図中右側の赤矢印に着目すると、細い矢印は= タイムステップの計算点 からの影響を、2本の太い赤矢印は =+1 タイムステップにおける両隣の計算点からの影響を考慮していることを表しています。これらを合わせて最終的に=+1 タイムステップでの の状態変化を計算します。
陰解法は計算の安定性に非常に優れており、陽解法と比較して空間刻み幅に対する時間刻み幅を大きくとることができます。
一方、1回あたりの計算では未来の未知の空間的情報を含んでいるために、連立方程式を解く必要があり計算コストが高くなります。また、非線形性の計算には反復計算が必要であるといったデメリットもあります。
さいごに
今回は時間方向の離散化について解説しました。現象を1コマ1コマ(タイムステップ)毎に捉えて次のタイムステップを予測する、という手順でシミュレーションでは計算を行っています。
また次のタイムステップを予測する際には、陽解法や陰解法といった計算手法が用いられ、扱いたい現象とそれぞれの計算手法のメリットデメリット、求める精度、計算の早さや安定性を踏まえて、手法の使い分けがなされています。
[From M. Matsuo]
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