粉体シミュレーションで世界的にも標準的な手法となっているDEM(Discrete Element Method)における計算の安定性についてご紹介します。
DEMには下記のような安定条件がよく知られています。
Δt < 2π/Ω * √(m/k)
Δt: タイムステップ(計算の時間刻み)
m : 粉体の質量
k : 粉体のバネ定数
Ω : 5~20以上
では、この安定条件はどのような意味なのでしょうか。
まずDEMのモデル化について改めて確認しましょう。
DEMでは、1つ1つの粉体に対して運動方程式を解きながら粉体の運動を追うモデルとなっています。
粉体同士が衝突した際にかかる力をばね、ダッシュポットおよびフリクションスライダーで表現します。
上記のモデル化により、粉体は減衰振動をするようになります。
その際の振動周期は下記で記述できます。
T = 2π * √(m/k)
T:周期
DEMの安定条件と比較するとこの周期をΩで割っていることがわかります。
従って、DEMの安定条件は粉体の振動運動をΩ回(5~20回以上)キャプチャして計算するという意味になります。
それでは、この条件は万能なのでしょうか。
答えはNOです。
(もちろんΩの値次第ですが。。。)
DEMの安定条件で考慮されていないのは、粉体の移動速度です。
安定条件では、粉体の速度をばねによる振動の速度と仮定されています。
粉体が単に自由落下する挙動を考えると、粉体はばね定数と無関係に加速されていきます。
そのため、粉体の移動速度は、ばねによる振動の速度より速くなることがあります。
粉体の移動速度が速くなると、安定条件の想定よりも1ステップ当たりの移動距離が長くなります。
その結果、粉体同士が衝突する際の干渉量は大きくなり、粉体の発散が引き起こされます。
それでは、DEMの安定条件はどのような場合に適用できるのでしょうか。
それは、粉体が密に詰まり準静的な状態となっている場合となります。
粉体が密に詰まっている場合には、粉体の移動速度がほとんどばねによる振動の速度になるためです。
DEMの安定条件が適用できない場合には、それぞれの系で想定される粉体の移動速度から1ステップ当たりの移動距離が粉体の100~1000分1程度になるようにタイムステップを決める必要があります。
例えば、先ほどの自由落下する粉体の例では、タイムステップは下記のように決めることができます。
Δt = Δx / V < d / A / √(2gh + v0^2)
Δx:1ステップ当たりの粉体の移動距離
V :粉体の移動速度
d :粉体の直径
A :粉体直径との比(100~1000推奨)
g :重力加速度
h :粉体の初期高さ
v0 :粉体の初期速度
粉体解析に限らず、その他の解析でも条件式の意味を正しく理解して、適用範囲を把握することで無駄な計算をなくし適切な条件を設定できるようになります。
[From K.Yamaguchi]
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【粉体】粉のお話 Vol.14|DEM安定性
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