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技術コラム

【粒子法】vol.32 DEM-MPS連成解析によるボールミルの運転条件検討

2024年10月01日

はじめに

今回のコラムでは粉砕機であるボールミルを対象に、Particleworks/Granuleworksを使ってDEM-MPS連成解析を行ってみました。解析対象をボールミルとしましたが、検討事項は運転条件です。製造現場における設備の運転条件は成果物の品質やコストに直結します。しかし、重要だと分かっていても、その意思決定が勘や経験で決められてしまうことがあるのではないでしょうか。

ボールミルは固体材料を粉砕して微小サイズにする粉砕機の一種です。回転容器(シェル)と複数のボール(メディア)から構成されるシンプルな形状で、シェル内にメディアと粉砕したい材料、液体を入れて回転させ、メディア同士がぶつかることで材料が細かく潰されていきます。

そんなボールミルにおいても運転条件が重要です。シェルの回転数やメディアの量、粉砕する材料は何なのか、検討する要素が多々あります。そこで、本コラムではボールミルを例に挙げ、シミュレーションが運転条件の意思決定に貢献できるのか検討しました。


解析内容

ボールミルの運転条件の良し悪しを決める基準には粉砕に寄与するメディアの衝突エネルギーを使用し、以下の2パターンの全5ケース解析を行いました。

解析1 シェルの回転数が異なる3ケース。
解析2 メディアサイズ(体積一定)が異なる2ケース。


解析モデル

解析モデルを以下に示します。
(※本来このようなシミュレーションでは粉砕材料もDEMで表現すべきですが、粒子数が膨大で計算負荷が高いため、粉砕材料が分散した液体を想定したスラリーをMPSで表現しました。)


正面図(右:メディアのみ表示)


俯瞰図


解析条件

ボールミルの運転条件、物性値、解析パラメータを以下に示します。


運転条件:解析1


運転条件:解析2


物性値と解析パラメータ



解析結果

解析1

解析1のアニメーションを以下に示します。




No.1とNo.2ではメディアが循環している点で一致していますが、No.2の方がよりz軸の高い位置まで移動するのが確認できます。最も高回転数であるNo.3は様子が異なり、一定時間が経つとメディアが壁面に沿って回転しています。


解析1-解析結果


次に解析結果を見てみましょう。No.1とNo.2の衝突回数を比較するとNo.2の方が200回ほど多い結果となりました。これはシェルの回転数が大きくなることで、メディアの運動が激しくなったためと考えられます。しかし、最も回転数が大きいNo.3の衝突回数はNo.1、2のそれらと比べて1/3以下という結果になりました。これはアニメーションでも確認できたようにメディアが壁面に沿って運動し、メディア同士で接触しにくい状態になったためと考えられます。続いて衝突エネルギーに着目すると、No.2>No.1>No.3の順に大きな値を取りました。No.2のエネルギーが最も大きくなった原因としては、No.1とNo.3よりも衝突回数が多かったことに加えて、メディアが高い位置まで移動した後に落下することで衝突時の速度がより大きくなり、衝突1回のエネルギーが大きくなったためと考えられます。これら結果からシェルの回転数には最適値が存在し、それをシミュレーションによって見積もることが可能だと確認できました。


解析2

解析2のアニメーションを以下に示します。




No.4とNo.5のメディアの動きを比較するとNo.4の方が激しく運動しており、速度も速いことが確認できます。反対にNo.5のメディアは滑らかに流動しており、まとまって運動している様子が見られます。


解析2-解析結果


続いて解析結果を見てみましょう。衝突回数はメディア個数が多いNo.5の方が50倍ほど多くなりましたが、衝突エネルギーはNo.4の方が大きくなりました。この原因としてはアニメーションで確認できたようにNo.4のメディア速度の方が速いことや、メディア1個の質量が大きいことで、衝突1回のエネルギーが大きかったためと考えられます。No.5の場合、メディアが別のメディアに衝突するまでの距離が短く、No.4のメディアほど加速することができず、衝突1回のエネルギーが小さくなったと考えられます。これらの結果からメディアサイズには最適値が存在し、それをシミュレーションによって見積もることが可能だと確認できました。


おわりに

本コラムでは、DEM-MPS連成解析によってボールミルの解析を行いました。運転条件としてシェルの回転数、メディアサイズ(体積一定)には最適値があることを確認し、それらをシミュレーションによって見積もることが可能であると分かりました。今回はボールミルを例に挙げましたが、様々な事例に対してシミュレーションを活用することで、より良い運転条件の意思決定ができると考えられます。ご興味のある方は是非お問合せ下さい。

[From T.Karatsu]


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