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技術コラム

【粒子法】Vol.28 MPFI法による高粘性流体解析の精度向上

2024年05月14日

はじめに

粘性の高い液体を垂らしたときにとぐろを巻くような挙動はご覧になったことがあるでしょうか。そのような挙動はコイリングと呼ばれ、例としては、はちみつを垂らしたときの動きがよく挙げられます。
この挙動により、容器へ注入するような状況で空気を取り込んだり、高さが出てしまって封をする際に内容物の巻き込みが起きてしまうことがあります。
Particleworks8.0の新機能として実装された新しい粒子法MPFI法では、従来のMPS法では再現が難しかったコイリング現象を再現することが可能となりました!
今回はMPFI法を適用した高粘性流体の充填プロセス事例を紹介いたします。


MPFI法の特徴

MPFI(Moving Particle Full-Implicit)法は圧力項と粘性項を分離することなく、陰的に解きます。これにより、MPS法で発生していた圧力項と粘性項の分離誤差が発生しないというメリットがあります。分離誤差が発生しないため、解析の時間刻みを大きくすることができます。
また、本機能の粘性項は、ダンパ型の粘性モデルで計算します。ダンパ型の粘性モデルを使うことで角運動量保存則を満たすようになり、高粘度流体の回転による効果も考慮できるようになります。


メリット

  • 従来の半陰解法型で発生していた、圧力項と粘性項の分離誤差が発生しない。
  • 完全陰解法のため、陽解法型粒子法に比べて時間刻みを大きくできる。
  • 非圧縮性が保たれやすい。


デメリット
  • 圧力と速度を同時に解くため、従来手法に比べて必要なメモリや1ステップの計算時間は大きくなりやすい。
  • 問題に応じて適切な音速値をパラメータとして与える必要がある。


解析対象

チューブ容器へ高粘度流体を充填する状況を再現し、MPS法とMPFI法で挙動を比較します。


解析モデル
解析モデルを以下に示します。




解析条件



実施ケース


解析結果

解析結果のアニメーションを以下に示します。(左からMPS、MPFI)





2つのモデルの物性値はどちらも同じですが、挙動が大きく異なることが確認できます。
MPSはノズルから射出された流体がまっすぐ容器に注入されています。それに対してMPFIでは、0.3sからとぐろを巻くような動きが見られます。また、ノズルが引き上げられたあと、ノズルに付着した流体が一緒に持ち上がり、その後ちぎれて落ちるような動きとなっています。
また、注入後2.0s時点の液体の高さを比較します。MPSは高さが109.5mmであるのに対し、MPFIは129.1mmと、約20mmの差が見られました。MPFI法の結果から、チューブ上部を圧着する際に、内容物を巻き込んでしまう可能性が推察されます。





まとめ

MPFI法を用いることで、高粘性流体の特徴的な挙動、コイリングが表現できることを紹介しました。これによって、以前はシミュレーションによる再現が困難だった高粘度流体の自由表面流れを精度良く可視化できます。


生産プロセスの可視化を通して、効率的に不良原因の究明や、歩留まりの改善ができるよう、MPFI法をご活用ください



[From Y. Mizuno]


参考文献

[1]Particlewors Theory Manual 8.0, 15. Moving Particle Full-Implicit (MPFI) 法
[2] Masahiro Kondo. A physically consistent particle method for incompressible fluid flow calculation. Computational Particle Mechanics, 8(1):69–86, 2021.
[3] Masahiro Kondo, Takahiro Fujiwara, Issei Masaie, and Junichi Matsumoto. A physically consistent particle method for high-viscous free-surface flow calculation. Computational Particle Mechanics, 9(2):265–276,
2022.


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