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技術コラム

【粒子法】Vol.22 粒子法の可変解像度による計算コスト削減効果

2023年08月03日

概要

粒子法流体解析ソフトウェアParticleworks 8.0に新機能として可変解像度が追加されました。可変解像度を適用することで、狭い領域や高解像度にしたい領域のみを小さい粒子径で計算することができ、計算負荷・メモリ消費を抑えることが可能になります。
今回、Particleworksを使い始めて1か月間の弊社の新入社員が、本機能の解析「オリフィスの流量係数の評価」に取り組みましたのでご紹介致します。

はじめに

今回取り組んだ「オリフィスの流量係数の評価」について説明します。
オリフィスとは、薄い壁にあいた流体を流す小さな穴のことを指します。水を入れたタンクの液面(液面の変化は微小とする)とオリフィスについて、ベルヌーイの定理(位置エネルギー、圧力エネルギー、速度エネルギーの和が一定)を考えると以下の関係が成り立ちます。



ここでPは大気圧[Pa]、pは流体密度[kg/m3]、gは重力加速度[m/s2]、hはオリフィスの中心から水面までの高さ[m]、vはオリフィスでの流速[m/s]です。



式(1)より、オリフィスでの流速vを求めると、以下の通りになります。
これがトリチェリの定理です。



しかし、式(2)は摩擦などの損失を無視した値であり、実際には、オリフィス近傍の縮流や摩擦による損失のために、流速はより小さくなります。補正係数をCとすると実際の流速は以下の式で表されます。



この補正係数Cは、流量係数と呼ばれます。流量係数Cは、無次元数であり、オリフィス孔の形状により変化することが知られています。シャープエッジオリフィスでは0.61、フラットエッジオリフィス(オリフィスの内径d、オリフィスの板厚tとしてd/8<t<dの場合)では0.79程度の値となります。今回検討する3Dモデルでは、後者のフラットエッジオリフィスを作成しました。

解析条件

150mm×150mm×300mmのタンクに、高さ190mmの水を初期配置させます。底部から100mmの位置を中心として、直径40mmのオリフィス孔をあけ、水の流れる様子を検証しました。物性値として、下記の表に示す水の一般的な物性を使用しました。



物性値として、下記の表に示す水の一般的な物性を使用しました。
解析条件は下記の表の通りです。可変解像度を用いて、高解像度領域の粒子径を変更して、以下の3ケースを比較します。




解析結果

解析のアニメーションを示します。
オリフィス付近に表示されている点線領域は、高解像度が適用されている領域です。

解析結果のアニメーション(流速分布表示)
(左から、Case1、Case2、Case3)

また、解析結果より流量係数C(流速が安定した2.0~2.2[s]で平均値)を比較します。



上記のグラフより、高解像度の比率の増加に従って、流量係数Cは理論値(グラフ内のオレンジ色の点線)に近づくことが確認できました。

また、可変解像度適用による計算負荷・メモリ消費の削減効果について、可変解像度を適用せず解析領域全体を粒子径1.25[mm](Case3の高解像度領域の粒子径と同じ値)として解析した場合に比べて、Case3では、初期の合計粒子数は約1/9に削減され、計算時間は約1/7に短縮することができました。

おわりに

今回のコラムでは、Particleworks 8.0の新機能である可変解像度を用いて、オリフィスの流量係数を評価しました。
流れへの影響が強い特定の領域において、可変解像度と適用し解像度を上げることで、流量係数は理論値に近づくことが確認できました。更に、計算負荷・メモリ消費ともに削減効果が得られることを確認しました。

[From Hiroaki.Chin, Mamika.Kawahara]

参考文献

日野幹雄 (1992). 流体力学 朝倉書店

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