今回の流体コラムでは、SOLIDWORKS Flow Simulation による、流体力学における破壊的干渉の実際の使用例をご紹介します。
COLUMN
技術コラム
【流体】流体力学の応用 破壊的干渉による抗力低減
背景
破壊的干渉とは、位相差を持つ別の波を重ね合わせることで、波の弱化または打ち消しを指します。この原理は、水を通過する船の抵抗を減少させるために利用されています。
船の抵抗は、船首波、つまり船の前方に形成される波が主な原因です。船首波による抵抗を減らすために、船は破壊的干渉を利用して船首波を弱めます。これは、船体に「球状船首」または「バルバス・バウ」と呼ばれるものを組み込むことで実現されます。船首前方の水線のすぐ下に突き出る突起です。
船が水を通過すると、球状船首は船の自然な船首波に加えて、船の前方に第 2 の波を発生させます。球状船首は、第 2 の波の谷が自然な船首波の穂と一致するように設計しています。2 つの波が重なると、第2の波が船首波を部分的に打ち消し、抵抗を最大 15% 削減します。
解析設定
この解析では、流線型の船体モデルを 2 種類使用します。1 つは球状船首付き、もう 1 つは球状船首なしです。
SOLIDWORKS Flow Simulation の自由表面流れおよび重力のオプションを使用して、水線とその上の空気をシミュレートします。 これにより、船が水を通過したときの水面の反応を調べることができます。
解析結果
水体積分率の等値面プロットで、水面の動きと船首波を視覚化できます。球状船首のあるモデルでは、球状船首のないモデルよりも船首波が小さくなることを表現できます。
流跡線プロットで、水が球状船首を越えて流れ、その後船体の側面を流れ下ることが見られます。
抗力の結果には、球状船首がある場合に抗力係数 CD が 7.24% 減少します。
ρ - 水の密度 (kg/m3)
v - 自由流れの速度 (m/s)
Swet - 船体水没面積 (m2)
まとめ
今回のコラムでは、流体力学における破壊的干渉の実際の応用例をご紹介しました。一見すると、流線型の船体に球状船首を追加すると、抗力に悪影響を与えるように思えます。確かに、球状船首は船体水没面の増加により低速時に抗力を増加させます。船首波は低速時には弱いため、船全体の抗力のほとんどは船体水没面の摩擦力から生じます。船首波を弱めてもあまり効果はありません。
しかし、高速時には船首波がはるかに大きくなり、船の抗力の主な原因になります。その場合、球状船首からの破壊的干渉による抗力の減少は、船体水没面の増加による追加の抗力をはるかに上回り、結果として全体的な抗力の減少につながります。
[From Jason Matthews KOK SHUN]
使用ソフトウェア(SOLIDWORKS Flow Simulation)
・ 熱流体解析ソフトウェア SOLIDWORKS Flow Simulation 製品ページ
https://www.sbd.jp/products/flow/solidworks_flow_simulation.html
重力 | ↓ |
---|---|
速度 | 30 kn –「Queen Mary 2」の巡航速度 (このタイプの船体形状を採用した遠洋定期船) |
メッシュ数 | 470万 |
球状船首なしの CD | 0.001569 |
---|---|
球状船首ありの CD | 0.001455 |
CDの差の割合 | 7.24% |
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