今回の流体コラムでは、熱流体解析ソフトSimcenter FLOEFDを使用し、回転移動する野球ボールの空力解析の結果を紹介します。
COLUMN
技術コラム
【流体】野球と流体 vol.1 フォーシームの流体解析 ~マグヌス効果による揚力~
はじめに
私は10歳の時に野球を始め、その後野球とともに青春を過ごしてきました。小学校と中学校ではピッチャーを務めており、決め球はストレートでした。
憧れていたピッチャーは阪神タイガースで活躍された、藤川球児選手です。「火の玉ストレート」とも呼ばれるノビのあるフォーシームで三振の山を築く藤川選手を目標に練習に励んでいた学生時代が懐かしく感じられます。
今回は、そんなフォーシームについて空力解析を行い、人々を魅了する「ノビ」の正体について検証します。
フォーシームについて
ストレートにはいくつかの種類が存在します。フォーシームとは縫い目の向きを表し、ボールが1周スピンする間に縫い目 (seam) の線が4回 (four) 通過するストレートのことを指します。
図 1 フォーシームを正面から見たとき
このフォーシームは、マグヌス効果による揚力をより効果的に得られるとされています。
マグヌス効果
マグヌス効果とは、回転しながら進む物体にその進行方向に対して垂直の力(揚力)が働く現象です。
ボールがバックスピンをしながら移動していると、空気の粘性によってボールの上下で流速の差が生じます。
図 2 回転するボール周りの流速差
この流速差によって圧力差が生じ、ボールに揚力がかかります。これが、フォーシームのノビの正体です。
解析概要
それでは、実際に解析を行いフォーシーム周りの空気の流れを見ていきましょう。
今回の解析ではある速度で空中を回転しながら進んでいるボールを想定し、ボールを回転させながら正面から風を当てて、その際の空力(抗力・揚力・横力)を評価します。
解析モデル
図 3 野球ボールのモデル
図 4 モデルの全体像
解析ケース
今回は、ノビのあるフォーシームのキモと言われているボールの回転数を変えて解析を行いました。一流のプロ野球選手が投げるフォーシームの回転数は約2400rpmと言われているので、今回は2400rpmとその半分の1200rpmで計算しています。
解析結果
解析条件①②それぞれの空力解析は以下の結果になりました。
回転数の多い方が揚力が大きいという結果になりました。
流速と圧力の分布を見ると、マグヌス効果によって浮力が生じていることが確認できます。
図 5 ボール周りの流速分布(進行方向は左、回転はバックスピン)
図 6 ボール周りの圧力分布(進行方向は左、回転はバックスピン)
まとめ
今回の流体コラムでは、フォーシームの空力解析を行いボールに揚力が生じる過程を検証しました。解析の結果から、フォーシームはマグヌス効果によって揚力が生まれていることを確認し、プロ野球選手は高い回転数によってノビのあるフォーシームを投げていることがわかりました。私も今回の検証結果を参考にし、草野球で活躍できるようまずはダイエットから始めたいと思います。
次回の「野球と流体」のコラムでは、ストレートなのに鋭く変化する「ツーシーム」について取り上げたいと思います。
[From K.Tsukidashi]
解析条件① | |
---|---|
風流入速度 | 147.6km/h |
回転速度 | 2400rpm |
気温 | 20.05℃ |
静圧 | 101325.00Pa |
解析条件② | |
---|---|
風流入速度 | 147.6km/h |
回転速度 | 1200rpm |
気温 | 20.05℃ |
静圧 | 101325.00Pa |
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