CASE
ヤマハ発動機株式会社 様 導入事例
粉体シミュレーションを用いたコンサルティング導入事例
技術・研究本部 NV・技術戦略統括部 MSB 部 企画グループ 工藤 芳清氏 ( 右)
技術・研究本部 デジタル開発統括部MBSE 推進部MBSE 構築グループ 嶋田喜芳氏 ( 左)
感動創造企業のヤマハ発動機株式会社では、いくつもの新事業に挑戦し続けている。その中の一つに、部門の壁を越えて同志を結集してスタートさせた、特殊な土嚢による砂漠緑化事業への取り組みがある。その事業に欠かせない、土嚢充填装置の試作機開発にあたり、構造計画研究所に粉体解析ソフト 「Granuleworks」による砂の解析を依頼。その結果をもって、試作機を製造し実証実験も成功させた。依頼から成功までの経緯と今後の展望などを、緑化事業を担当していたヤマハ発動機株式会社 技術・研究本部 NV・技術戦略統括部の工藤芳清氏と流体解析を担当している技術・研究本部 デジタル開発統括部の嶋田喜芳氏に語っていただいた。
緑化事業のための試作機開発に役立つと確信
― 弊社にGranuleworksによる砂の解析をご相談いただいた経緯を教えてください。
貴社が目的とする事業はどのようなものだったのでしょうか。
当社が取り組んでいる様々な事業の中の一つに砂漠の緑化事業があります。砂漠になかなか緑が広がらない理由の多くは、吹き曝しの風により砂漠表層の砂と種子が移動を繰り返して、同じ場所に定着 しないため、そもそも種子が発芽できないからです。
そこで、数百メートルほどの細長いチューブ状の土嚢に現場の砂を注入して、格 子状に広く設置します。すると、その土嚢が壁となって格子の中の種子を含んだ砂が多少の風では吹き飛ばされなくなります。そこに雨が降るとやがて芽が出てきて、1、2年も経つと小さな草原ができます。しかも、土嚢も特殊な素材でできていて、緑の増加で改良された土壌により、CO2と水に分解され消滅し、10年も経つと緑の草原だけになります。
その数百メートルもある土嚢に人力で砂を詰めようとすると、膨大な時間がかかります。1ヘクタール当たり、1、2ヶ月かけても難 しいでしょう。そこで我々は雪を吸い込んで巻き上げる除雪機を改造して、砂の充填装置を開発しようと考えました。 我々の手で一度実施してみたのですが、装置の配管角度や砂の物性によって排出部で詰まりが生じ、チューブ状の土嚢にうまく充填できませんでした。
その原因を解明することができなかったので、除雪機で砂を巻き上げる機能を正確に見極める必要がありました。約半年後に当社の近くの砂浜で充填装置の試作機の実証実験を実施する計画があり、それまでにその仕様を決定したいと思っていました。 しかし当社には砂の解析の知見や力、検証のノウハウがなかったので、このまま我々だけで作っても失敗する可能性が非常に高かった。 まずは科学的に砂の解析を実施する必要がありました。
そこで根拠がつかめたら、正式に充填装置を作って実証実験に挑めます。 そこでインターネットで精度の高い粉体解析ができそうなシステムを検索したところ、いくつかヒットしました。その中で構造計画研究所(以下KKE)さんの解析が最も有効そうだと判断して、相談したというわけです。
解析結果をもとに試作機製造に成功
― その後の進捗について教えてください。
KKEのSBDエンジニアリング部の担当者と打ち合わせを行い、い ろいろな状態の砂でもしっかりとチューブに充填できるかどうかな ど、話し合いました。
その後当社から試作機の3DCADデータをKKEの担当者に渡し、それを使って「Granuleworks」で装置内の砂の挙動のシミュレー ションを実施していただきました。
この解析結果を見て、通常の砂漠で考えられる砂の物性であれば詰まらず、問題なく土嚢に充填できることを確認できました。おかげで我々もこの設計で問題ないという根拠をつかめましたし、上層部も納得して試作機の開発の許可を出したので、製造に取り掛かることができました。
その後、試作機を完成させて、近くの海岸で実証実験を実施。問題なく土嚢に砂を充填、敷設できました。現在は、機械施工したところが草原化するかを観察しています。
わかりやすくキメの細かいサポート
― KKEにGranuleworksによる粉体解析を依頼してよかったと思う点を教えてください。
Granuleworksはいろいろ条件を変えて細かい分析ができるとこ ろが非常によかったですね。また、シミュレーションによってチュー ブ内に砂が溜まる箇所がよくわかったので、すぐ改良でき、とても役に立ちました。また、解析結果が画像を使ってひと目でわかるので、シミュレーションが得意ではない人でも理解しやすいところもよかったです。
この過程で、KKEの解析担当者にはパラメーター設定のところからの丁寧なコンサルティングや適切な条件合わせなど、まさに手取 り足取り教えていただきました。
担当者の説明もわかりやすかったですし、相談もしやすかったですね。砂の粒子の挙動についてのモデルの数式まで詳しく丁寧に教えていただいたので、理解しやすかったです。かなり手厚くサポートしていただきました。
他分野での活用の可能性も
― 今後の展望を教えてください。
今回のGranuleworksによる解析をもとに製作した試作機が、砂漠の緑化に十分活用できることがよくわかりました。今後はそれを持続的に展開していくためのビジネスモデルをしっかり構築してい かなければならないと思っています。
また、他分野での利用という意味では、二輪車は、特に発展途上国では未舗装の埃が多い道路を走ることが多いので、必ず開発段階で防塵性の評価確認をしています。2000年頃から、その埃の挙動を有限体積法のシミュレーションで確認していますが、開発部門から要求される精度が上がってきているので、Granuleworksを使っ てより精度を上げて確認できればうれしいですね。
※記載されている会社名、製品名などの固有名詞は、各社の商標又は登録商標です。
取材日:2021年4月 | |
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ヤマハ発動機株式会社について | 創立:1955年 本社所在地:静岡県磐田市 ホームページ:https://global.yamaha-motor.com/jp/ |
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